西野康造はチタン、ステンレス、アルミニウム、鉄などの金属をおもな素材として制作する彫刻家です。自然現象を観察し、そこから想を得て、形を結んで行きます。複雑で繊細、しかもスケールの大きい彫刻は内外で高く評価されていますが、なかでも野外に設置され、自然の風を受けて悠然と動く一連の作品は、人々の心に深い印象を刻みます。
私は、何か空気や風を感じさせるものをつくりたい。
私の彫刻は、それらの大気に抱かれながら生きている私たち人間をも表現するものであってほしい。
私は普段から目に入ってくるもの、経験したことを記号に変換して記憶することよりも、映像のまま心に残す、つまり感覚的に物事を捉えることが多い。
逆に言葉にしたり、文字にしたりすると、その感動が、その時、急速にしぼんでしまうような気がする。制作の方法も同様に、精密な設計図は無い。手で金属線を曲げながら、微妙な曲線を描いていく地道な実験であり、手仕事なのである。
私は彫刻をつくることによって、不確かで目には見えないが確実に存在している何か、例えば蜘蛛の巣のように、それ自体ははっきりと見えなくても、光が当たるとさっと現れ、雨が降れば水滴によってその輪郭を浮き上がらせる「何か」を追求したいと思っている。
また一方で、彫刻がその大いなるものに抱かれながら生きている私たち人間をも表現するものであってほしい。決して冷たいものではなく、そこにいつも人間がいるようなものにしたい。私自身の体温が見る人に伝わればといつも願っている。
西野康造